2022/05/05ブログ
この記事の内容
この記事では、起業してスタートアップをやってみたくなってきた方向けにスタートアップの始め方についてざっくり解説します。
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1 ビジネスモデルを考える
まずは自分がどのようなビジネスを立ち上げたいのか、ビジネスモデルを考えます。
会社は維持コストがかかるので会社を設立するのはもっと後で十分でしょう。
ビジネスモデルの構築については私も専門家というより1プレーヤーに過ぎませんのであまり偉そうなことは言えませんが、漠然と考えを巡らせるよりも以下のようなポイントに絞って考えると思考が整理されやすいように思います。
※なお、弊所が自身スタートアップとして立ち上げているサービスはこちらです。
- DIKE|発信者情報開示命令申立書起案サービス
- 誹謗中傷と戦う。裁判所提出書類作成WEBサービス「DIKE(ディケ)」β版リリース。発信者情報開示命令の申立てを迅速かつ低コストで。|弁護士法人アインザッツのプレスリリース (prtimes.jp)
誰のどんなペインを解決するのか決める
およそビジネスは「誰かの問題を解決することでお金をもらう」ものですので、まずはあなたが解決を目指すペインを決めましょう。
ペイン(痛み)とは、人が抱えるお金を払ってでも解決したい問題のことです。
使い古されたビジネス格言として、以下のようなものがあります。
ドリルが欲しい人なんていない。求められているのは穴である。
ビジネスモデルを構築しようとすると、どうしても「自分に何ができるか」からスタートして商品やサービスを設計しがちです。
プログラミングができるからアプリを売ろうとか、広告業界にいたからマーケティングサービスを開発しようとかといった発想です。
しかし、重要なのは「あなたが何を売りたいか」ではなく「顧客が何を欲しがるか」ですので、やはりペインからスタートする方が筋のいいビジネスモデルが生まれやすいと思います。
そのペインの解決に人がいくら払えるか調べる
解決するペインを定めたら、次は人がそのペインの解決にいくら払えそうかを考えます。
同じペインを解決する既存のサービスがあるなら顧客がそれにいくら払っているのかを調べてもいいでしょう。
アンケートを取ってみるのもおすすめです。
仲間内に協力を求めるのもいいですし、有料・無料のアンケートサービスもあります。
SurveyMonkey: 世界で最も愛される無料のオンラインアンケートツール
解決策を考える
解決を目指すペインを、顧客が支払える予算の範囲内で解決できる方法を考えます。
単純な原価だけでなく維持費やマーケティング費用もざっくりで構わないのでイメージしておければベターです。
ありがちなミス:全部乗せ
ビジネスモデル構築時のありがちなミスとして、ペインと解決策のセットをあれもこれもと全部乗せしてしまうというものがあります。
例えば、お子さんのいるご家庭向けのサービスとして、①おむつのサブスク、②シッターさんの手配ができるポータル、③パパママ交流SNSを一つのサービスにまとめてしまうようなパターンです。
このような全部乗せビジネスモデルを作ってしまうと、例えばこのサービスの値段を月5万円としたが売れなかったというような場合に、①・②・③のどれがダメだったのかがよくわからなくなってしまいます。
最初のビジネスモデルがうまくいった後で横展開・縦展開することは大いに考えられるので、最初のうちは我慢しておくのがよいのではないかと思います。
2 事業計画を考える
大体のキャッシュフローを考える
開発費、マーケティング費、人件費など、黒字化までにどれぐらいの費用と時間が必要になりそうかを計算します。
これにより、向こう数年間の事業計画(特に黒字化まで)を策定します。
借入れ(デット)が可能か考える
必要になりそうな額とビジネスモデルからして、金融機関から借入れができ、かつ返済ができそうかを考えます。
必要になりそうな額が十分に返済可能な額である場合や、黒字化が見込みやすく金融機関の理解も得られやすいようなモデルであれば借入れも十分に考えられます。
個人保証(会社が返済できなかった際に創業者が代わりに返済する義務)の有無によってもデットかエクイティかの判断はすべきでしょう。
個人保証は創業者の負担が大きく株式会社化するメリットもほとんど失われてしまう点に注意が必要です。
特に我々の世代は将来への不安が大きい世代ですので、個人保証があるのならばエクイティ・ファイナンスを検討する方向に傾きます。
エクイティ・ファイナンスが可能か考える
借入れが難しそうなら今度はエクイティ・ファイナンスが可能かどうかについて考えます。
投資家にお金を出してもらう以上、投資家にも利益が期待できなければいけません。
- 市場規模や顧客単価からして爆発的成長が可能か
- 5〜15年程度でEXITできそうか
といった投資家の立場に立った検討が必要になります。
例えば、
- 同じペインを解決する競合サービスの市場が既に年100億円規模で形成されている。
- 競合サービスの顧客単価は1人100万円。
- あなたのサービスの顧客単価は50万円。一人当たりの利益は10万円。
- 競合サービスを利用している人の50%はあなたのサービスに乗り換えてくれそう。
という条件なら、あなたのサービスは年商25億円、うち利益5億円となる可能性がある、というような推算が可能です。
どちらにも向かない場合もある
残念ながら、デット・ファイナンスにもエクイティ・ファイナンスにも向かないというビジネスモデルは存在すると思います。
イノベーティブでリスクが高いのに、成長スピードが遅く黒字化まで20年かかるような場合などは金融機関も投資家もいずれもお金を出しにくいでしょう。
そのような場合は自己資金で行うか、ビジネスモデルを変更せざるを得ないでしょう。
3 壁打ち
エクイティ・ファイナンスを選択した場合、次にすべきは投資家探しです。
しかしその前に、何度か先輩起業家・投資家・スタートアップ界隈の専門家に壁打ちに付き合ってもらうのがいいのではないかと思います。
なぜなら、自分の考えているビジネスモデルが外から見たら意外とイケておらず、箸にも棒にもかからないパターンも往々にしてあるからです。
弁護士の立場からすると、ビジネスモデルがシンプルに違法というパターンもよく見かけます。
グレーならグレーでどうクリーンにやっていくかを考えなければいけません。
弊所でも壁打ちはいつでも歓迎していますので以下よりお気軽にご連絡ください。無料です。
4-1 投資家探し
壁打ちでビジネスモデルをブラッシュアップしたら、プロトタイプを作るための資金を獲得しましょう。
投資家を説得するためのプロトタイプのプロトタイプぐらいは作っておいてもいいかもしれません。
ピッチ資料を作ってシード期を投資対象としているVCやエンジェル投資をしているアントレプレナーに壁打ちをしてもらったり、ピッチイベントに出てピッチに付き合ってもらいましょう。
最近ではVCのデータをまとめたサイトもあって大変便利です。
スタタイDB|事業探しからVC探しまでワンストップで行えるDB (notion.site)
また最近ではDiscord上でのピッチイベントなどもよく行われています。
4-2 会社設立
投資家探しと並行して、そろそろ株式会社を設立してもいい頃合いだと思います。
会社設立は自分でもできますが、スタートアップ法務に慣れた専門家に依頼するのがおすすめです。
もちろん弊所でもやっていますので是非ご相談ください。
なお、これはポジショントークでも宣伝でもありません。
スタートアップのライフサイクルには不可逆の変化を伴うやりなおしが効かない場面があり、そこでのコストは惜しんではいけません。
設立は比較的やり直しが効きやすい場面ですが、それでも二度手間でコストもかかるので最初から専門家に依頼するのがお勧めです。
会社設立を専門家に依頼する場合、概ねその報酬は10〜20万円程度です。
これに加え、登録免許税等の実費が20〜25万円程度かかります。
この費用は仮に自分で設立手続を行ったとしても発生します。
したがって、会社設立を専門家に依頼した場合にかかる費用の合計は30〜45万円程度です。
ここで支払うコストが惜しいようなら、出資してくれそうな投資家を見つけてから設立するというのも手だと思います。
まとめ
以上がスタートアップの始め方の概要になります。
- まずはビジネスモデル構築
- 次に事業計画
- デット/エクイティファイナンスを検討
- 投資家探し&会社設立
この後は株式発行など資金調達の本丸に突入しますが、これらについては別の記事に譲ります。
なぜなら、実務家の肌感覚としては一番最初の資金調達すらかなりの難関であり突破できるスタートアップは限られるからです。
もっとも、資金調達のためにビジネスモデルをブラッシュアップし続けることでビジネスとしての成功確率も上がっていくはずですので、これはスタートアップの良いところでもあります。
キレッキレのビジネスモデルを携えて、投資家に「是非出資させてくれ」と言わせてみましょう。
起業しましょう!!
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