2021/08/02ブログ
前回に引き続いて、VCファンドについて取り扱っていきます。
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ベンチャーキャピタルファンドとは?〜①基本編〜
今回は、第2回「LPSの基礎」として、代表的なVCファンドのビークルである投資事業有限責任組合(LPS)について、法律面から解説をしていこうと思います。
LPSを作ってみたい、ベンチャーキャピタルの人たちが話している言葉を理解したいという方はぜひご一読ください。
LPSの基本
そもそもLPSとはどのような組合をいうのでしょうか。
LPSは投資事業をするための組合
LPSとは、各組合員が出資をし、共同で一定の投資事業を行うことを約することで成立する組合をいいます。
投資事業のためのちょっと特殊な組合、ということですね。
LPSにはGPとLPという2種類の組合員がいる
では何が特殊なのかと言えば、LPSにはGPとLPという2種類の組合員がいるというところが他の組合組織との1番の大きな違いです。
すなわち、LPSには
- 業務を執行し、無限責任を負う無限責任組合員(General Partner)と、
- 業務を執行せず、有限責任を負うにとどまる有限責任組合員(Limited Partner)
という2種類の組合員がいるのです。
LP・GPとは?
LPは出資した額までしか責任を負わない
組合員の責任についてはLPS法第9条に定められています。
(組合員の責任)
第九条 無限責任組合員が数人あるときは、各無限責任組合員は組合の債務について連帯して責任を負う。
2 有限責任組合員は、その出資の価額を限度として組合の債務を弁済する責任を負う。
3 有限責任組合員に組合の業務を執行する権限を有する組合員であると誤認させるような行為があった場合には、前項の規定にかかわらず、当該有限責任組合員は、その誤認に基づき組合と取引をした者に対し無限責任組合員と同一の責任を負う。
この第2項にある通り、LPはその出資した額までしか組合の債務を弁済する責任を負いません。
そのため、組合が信じられないような赤字を叩き出して膨大な負債を負うことになったとしても、LPは出資したお金さえ諦めれば、それを超えて組合の負債を肩代わりさせられることはないのです。
LPSのポイントはまさにこの、LPが有限責任しか負わない、という点にあります。
この有限責任が認められているからこそ、LPSは投資家たち(LPたち)から多くのお金を集めることができるのです。
GPはたいてい投資判断のプロ
LPが有限責任で済むのであれば、業務執行までさせられる上に無限責任まで負わされるGPがあまりにも可哀想な気もします。
しかし、通常GPはLPたちと比べてごくわずかな額しか出資をしません。
また、GPはLPSから多額のファンド管理報酬と成功報酬を受け取ります。
誤解を恐れずにいえば、
GPは、投資でお金を増やしたい人たち(LPたち)のために、お金をもらってLPSというビークルを運転するプロのドライバー
な訳です。
そのため、通常、GPには投資判断能力が高い、ベンチャーキャピタルなどのプロのキャピタリストが選ばれます。
GPも有限責任にできる
さて、GPが個人のままだと本当に無限責任を負ってしまいます。
しかしここで一工夫し、GPを株式会社や合同会社、あるいは有限責任組合(LLP)にしてしまうことで、GPについても事実上有限責任に限定することが可能です。
このように、LPSは工夫次第では組合員全員を有限責任を負うにとどめることができるという点で、他のビークルと比べて優れており、ベンチャーキャピタルファンド向きなのです。
どんな法律が関係する?
さて、このように優れた投資事業向きビークルであるLPSについて検討する際、どのような法律が関係してくるのでしょうか。
投資事業有限責任組合法(LPS法)
LPSは投資事業有限責任組合法(LPS法)を根拠とする組合です。
そのため、LPSの組成手続や規制などについては主にLPS法に規定されています。
金融商品取引法
そして、LPSが行う投資事業は金融商品取引法(金商法)上の「金融商品取引業」に該当しますので、金商法上の規制も受けます。
LPS法と金商法の2つが重要!
以上の2法典、LPS法と金商法がLPSを理解する上で重要な法律となります。
LPSはどうすれば組成できる?
それでは実際にLPSを作りたいと思った時にはどうすれば良いのでしょうか。
原則的な組成手続は案外シンプル
LPSの組成手続はLPS法に定められています。
原則的な組成手続は案外シンプルで、大きく分けて以下の4ステップです。
- LPS契約の作成
- 出資金の払込
- 登記申請
- 登記完了
もちろん、LPS契約に定めるべきことが法定されていたり、登記申請手続をしなければならないという面倒さはありますが、これらの点については「やればできる」ものになりますので、それほど厄介なものではありません。
これらの具体的な手続については次回以降の解説に譲ります。
なぜならば、LPSを組成しようと思ったら、まずは金商法のハードルの方を先にクリアしなければならないからです。
金商法のハードルについては次回に続きます。
次回の記事⇒ベンチャーキャピタルファンドとは?~③法律編-金商法のハードル
前回の記事⇨ベンチャーキャピタルファンドとは?〜①基本編〜