2021/07/03ブログ
ツイッターやインスタグラム・フェイスブック等のSNSで、匿名の投稿者から誹謗中傷や個人情報の暴露などの嫌がらせを受けた場合はどうしたら良いのでしょうか。
匿名の投稿者というのは大抵、自分の本名や住所を特定されることはないものと思っています。
しかし実際は、弁護士に依頼すれば匿名投稿者の本名や住所を特定することができます。
特定さえしてしまえば、内容証明で警告文を送ることも、訴訟を提起することも可能です。
また、裁判手続を通じ、ツイッター社に当該投稿を削除してもらうこともできます。
他方で、ツイッターやインスタグラムなどの海外サービス上での誹謗中傷に対応できる弁護士というのはそう多くありません。
これは、国内法人を相手取る場合と異なり、海外法人を相手にすることになるため、さらに特別の知識やノウハウが必要になるためです。
そこで、本稿ではツイッターやインスタグラムで嫌がらせを受けた場合の対処法について解説します。
なぜ弁護士に依頼する必要があるのか
任意の削除・アカウント凍結要請もあるにはある
まず、インターネット上の誹謗中傷に対する対応として、弁護士に依頼する以外の方法がないわけではありません。
ツイッターをはじめ、ほとんどのサービスが誹謗中傷や他人の権利を侵害するような投稿については禁止する旨のサービス利用規約を設けています。
したがって、サービス運営者にサービス利用規約違反があることを通報し、削除やアカウント凍結をしてくれるよう、任意の要請をすることも考えられます。
このような対応は費用も手間もかからないため、とりあえず一旦試してみること自体は有益です。
もっとも、あまり対応してくれない
しかし残念ながら、現実にはサービス運営者がなかなか対応してくれないというケースが多いようです。
これは、サービス運営者からすると誹謗中傷を行っているとされる人も1ユーザーであるため、サービス運営者の一存で投稿を削除したりアカウントを凍結したりすると、そのトラブルに自分たちも巻き込まれかねないためです。
例えば殺害予告を行っているような、極めて明白に違法または規約違反である場合でない限り、迅速な対応は望めません。
サービス運営者も裁判所を通して欲しい?
他方で、発信者情報開示等の裁判所の関与する手続を踏みさえすれば、ほとんどのサービス運営者が速やかに対応してくれます。
結局、サービス運営者としても自分たちが責任を取らなくても良いのであれば迅速に動けるのであって、むしろユーザーの側がどんどん裁判手続を利用してくれた方が助かるのかもしれません。
匿名投稿・アカウントは何度でも復活する
また、仮にサービス運営者が投稿の削除やアカウントの凍結を行なってくれたとしても、再度投稿をしたり、アカウントを取得したりすることは簡単です。
そのため、結局、最終的な解決を図ろうと思った場合には弁護士に依頼するのが最善策となります。
1 発信者情報開示の仮処分
それでは、弁護士に手続を依頼するとどうなるのでしょうか。
まずは、ツイッター社やフェイスブック社などのサービス運営者に対して、
発信者情報開示の仮処分
を申し立てます。
これにより、発信者=投稿者のIPアドレスや電話番号など、投稿者の特定につながる情報をサービス運営者から取得します。
2 発信者情報開示請求訴訟または23条照会
上記1の発信者情報開示の仮処分で得られた情報を元に、今度は
- インターネットサービスプロバイダに対する発信者情報開示請求 または
- 携帯電話会社に対する23条照会
を行い、発信者=投稿者の氏名や住所を取得します。
これで匿名投稿者がどこに住んでいる誰なのか、特定が完了します。
3 警告・示談交渉・訴訟等
匿名投稿者の特定さえできれば、直接コンタクトを取ることができますので、さまざまな解決方法が考えられます。
もっとも簡便なのは、弁護士を挟んで投稿者と示談交渉を行い、
- 投稿を削除すること
- 謝罪すること
- 示談金を支払うこと
などの条件を話し合って示談をすることでしょう。
投稿者と示談条件で折り合えなかった場合には訴訟をすることも考えられます。
卑怯な匿名での誹謗中傷には毅然とした対応を。
以上の通り、ツイッターやインスタグラム・フェイスブックといったSNS上で、匿名で誹謗中傷されたり、個人情報を暴露されたりするなどの嫌がらせを受けた場合であっても、泣き寝入りする必要はありません。
海外サービス上での誹謗中傷に対応可能な弁護士に依頼し粛々と手続を進めれば、匿名の投稿者を特定して適切に対処することが可能です。
(注意点)
なお、上記の手続には注意すべき点もあります。以下の点には特にご注意ください。
① 少しでも早めに手続を依頼すること
インターネットサービスプロバイダは一定期間が過ぎるとログを削除してしまいます。
そのため、できるだけ早めに弁護士に依頼し、手続を開始しないと、せっかく申し立てても空振りとなってしまう可能性があります。
遅くとも投稿日から1ヶ月以内にご依頼いただくことをお勧めします。
これを過ぎてしまった場合には、ログが削除されてしまい開示請求が間に合わない可能性がかなり高まりますのでご注意ください。
② 開示が認められない場合もある
発信者情報の開示を受けるためには、開示を受ける必要性について裁判所に認めてもらう必要があります。
ただ単に不愉快であったからとか、相手の言っていることが間違っていると思うからとかといった理由では、開示が認められません。
投稿の悪質性、違法性については様々ですし、裁判所の判断も各裁判官の個性が出るところですので、必ず開示が認められるものではない点についてはあらかじめご留意ください。